Googleは修行の場、日本人エンジニアが描く大きな夢

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世界トップクラスのイノベーション企業、Google。とびきり優秀なエンジニアを採用し、自由な発想で新たなサービスを生み出し続けることで知られている。西浦一貴氏は、そんなGoogleで働くソフトウェアエンジニア。東京大学在学中にベンチャー企業でのアルバイトでエンジニアとして働き、その後Google JapanやFacebook本社でのインターンを経て、Google本社に入社した。「誰もがプログラミングをできる世界をつくりたい」と将来の夢を語る西浦氏に、Googleという世界的企業での仕事、入社までの経緯、今後のビジョンなどについて聞いた。

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Googleサンフランシスコオフィスで働く、唯一の日本人エンジニア

――現在Googleでどんな仕事をしていますか?
「Google Wallet」というモバイル向け決済サービスのチームで開発をしています。決済サービスは人々の生活になくてはならない影響力のあるものだし、まだまだ改善の余地も大いにあります。とにかく社会にインパクトのある仕事をしたいと考えてGoogleに入社したので、非常に楽しんでやっています。

――普段の仕事では、ひたすらコーディングしているんですか?
仕事内容としては、ある部分の設計をどうするかという相談や文書化、新規開発部分のコーディング、他人のコードのレビュー、バグレポートへの対応などです。

時間配分の比率は時期によってまちまちで、ずっとコーディングしかしてないような週もあれば、チーム内での合意形成のために、一行もコードを書かない週もあります。

――みなさんどんな働き方なんでしょうか?
ワークライフバランスの話でいうと、オンとオフを切り替えている人が多い印象です。夜7時や8時まで会社に残ってる人は多くありません。また、子供の授業参観などで仕事を休む人もよく見かけます。スケジュールを立てるときは、例えば年末はみんな休暇をとるから、ということを前提にして予定を立てたりします。

どういう時間配分で作業をするかということは個人に一任されていて、朝早く来て夕方帰る人もいれば、出勤は遅いけど夜まで働いている人もいます。

――個人のタスクはどうやって割り振られるのですか?
取り組むタスクは、各個人の意志が尊重されます。チームとして全体の目標とする方向があった上で、個人がどういうふうに貢献するかを、チーム内の話し合い、マネージャとの1対1の面談を経て、各人の意思で決めます。自分はこういう知識を持っているから、あるいはこれからこういう能力を付けたいから、ということに基づいて自分で手を挙げ、自分で計画をして進めていくことが基本となっています。

――Googleの風土はどんな印象ですか?
Googleは自由なように見えて、実はかなり組織だっているように感じます。きちんとルールが整備されており、それに沿って物事を進めましょうという雰囲気がありますね。

例えば、私がインターンしたことのあるFacebookはもっとゆるやかでした。コードレビューはあるのですが、レビューの基準やテストを書く量・頻度などがGoogleに比べるとゆるかったです。”move fast and break things”というのが信条で、エンジニアがスピーディに変更を加えることがより評価される風潮がありました。

余談ですが、”move fast and break things”はFacebookに昔からあるモットーだったのですが、それを言い訳にみんな好き勝手しすぎたので、私がインターンしていた頃からいろいろな言い換えが提案されていました。いまでは、”move fast and be bold”など、もう少しマイルドなモットーが主流になっているようですね。

――新人のエンジニアというのは何人ぐらいいるんですか?
全くわかりません(笑)。みんな敬語を使わないし、こっちの人は年齢も聞きませんから。他のチームとミーティングしたり協力したりするんですが、見た目とか会話の内容とかで、だれがベテランで、だれが新人なのか察することは難しいですね(笑)。

――ということは、新人としての扱いもしてくれないわけで、入社してからのキャッチアップは大変そうですね。
そうですね。社内独自のことも多いのでキャッチアップは大変です。例えば、私のチームも数年の歴史があるので、なぜここがこうなっているのか、などの経緯やルールを理解する必要があります。また、Googleには社内のツールがたくさんあってそれを使って仕事を進めたりするのですが、最初はその使い方もわからないので大変です。

ただ、社内に多くのドキュメントが蓄積されていますので、そこで自分で調べて学んでいます。内部ツールもかなり充実していて、非常に勉強になりますね。

――英語面はどうですか?
苦労してます(笑)。いまサンフランシスコオフィスでは自分が一番英語ができないかもしれません。サンフランシスコオフィスではまだ日本人エンジニアはいないみたいですし。それでも最近は、社内ミーティングでの発言量も少しずつ増えてきました。

ゲームをつくりたくてプログラミングを始めた

――そもそもプログラミングはいつから始めて、それは何がきっかけだったんですか?
中学生のときに初めてパソコンが自宅に来て、オタク心に火がつきました。パソコンで何か面白いことをしたいと思ったのを覚えています。しかし当時はインターネットも時間単位の課金で、あまり長時間は使えませんでした。

高校生になって、友達と「なにやらプログラミングでゲームがつくれるらしい」となり、C言語の本を買ったのがプログラミングを始めるきっかけでした。当時は開発環境も整っておらず、結局私は心が折れて挫折しましたね(笑)。

――ということは本格的に始められたのは大学に入ってからということですね? 
大学に入ってからも勉強しようとしては、結局長続きしなかったんですが、大学3年で学部を決定するときになって、「やっぱりプログラミングが面白そうだ」と思い、情報系の学科に進むことにしました。

というのも、当時から、はてなブックマークが好きで、そこで注目されるのが、エンジニアだったり、彼らが開発した新しいサービスや機能でした。それこそ、Googleが新サービスを開発して、何億人が使っていますとか。こういうインパクトを起こせるプログラミングは面白そうだ、と思っていました。

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Google本社入社までの道のり

――就活時期の話を聞きたいのですが、もともとGoogleに入社したいと思っていたのですか?
もともとGoogleには漠然とした憧れを持っていました。きっかけは、学生時代にある記事を読んで、「Googleすごいな」と感じたことです。その記事はGoogleの「インスタントサーチ」という技術に関するもので、「毎日何千万という人がインスタントサーチを利用しており、1回の検索あたりで平均3秒も削減されている。毎日、世界中で何千万人の3秒を削減するということは、合計したら何年分もの無駄な時間を削減したことになる」といった内容でした。たったひとつのサービスで、それだけのインパクトを世界に与えられるのは凄いと非常に憧れましたね。

そして実際に、大学時代にGoogle Japanでのインターンに参加したとき、本当に優秀な社員の方たちと一緒に仕事ができ、こんなすごい人たちと一緒に働きたいと思いましたね。またインターンでは実力が足りずに何もできず、いい修行の場にもなるとも感じました。

――Google Japanでのインターンの話も詳しく聞かせてもらえますか。
学部4年の夏休みでした。Googleのインターンは学科の先輩が例年参加しており、皆憧れを持っていました。しかし、院に進学するというのもあってか、学部4年で応募する人はほとんどいなかったんです。私は出すだけでも出してみようと思って応募してみました。

すると、幸運にもインターンに受かることができました。面接では技術的な知識しか聞かれなかったのですが、今までに聞いたことない知識というのはありませんでした。Googleの場合、入社時はコンピュータサイエンスのジェネラルな知識のみを問うて、実践的な部分は入社してから習得する、という方針だと思います。ですので、たしかに問題のレベルは高いけれども、学部で習った知識で十分に通用するので、意外とハードルは高くないのではと思います。

――インターンではどういった仕事をしましたか?
インターンのときはソフトウェアエンジニアインテスト(SET)という肩書きでした。SETというのは、Google社内で使うテストフレームワークを開発して、他のエンジニアがより信頼性の高いアプリをつくる手助けをする職種です。モバイル向けネイティブアプリのテストを自動化するツールの開発に参加していました。

――実際にインターンを経験してみていかがでしたか?
先ほど言ったように、結果は何も残せなかったなという印象です。教科書的な知識はあっても実務力が全くないことを痛感しました。

しかし、実際に2ヶ月働いて、自分は何がわからないのかはわかるようになりましたし、開発がどういう風に進むのか、どういう知識が必要なのかがわかりました。宿題をいっぱい持って帰ることができたという感じですね。別の会社で働くときも最低これくらいのラインが必要だろうな、というイメージをつけられたのはよかったと思います。

――Google以外にも採用試験は受けたのですか?
他にもシリコンバレー・ベイエリアの会社を中心にいくつか応募しました。Facebook本社のインターンには実際参加しましたし、その他にTwitterやYelp、coursela、ngmocoなどに応募しました。Facebookは当時、Googleに比べても規模が小さく、ここにいる少数精鋭のメンバーだけで世界を支えているんだというプライドのようなものを非常に感じました。

シリコンバレーのTech系企業の面接では、技術的なことのみを聞かれるのが一般的です。応募者が多い場合には、事前に電話面接があったり、Web上でコーディングテストを行う場合もあります。面接官の出題に対して、ホワイトボードや、電話面接の場合はGoogle docsのようなツールに、実際に擬似コードを書いていき、計算量はどれくらいになるか、こういうコーナーケースの時はどうするか、ということを議論したりします。

ちなみに、就活中の面白いエピソードとしては、Googleアドセンスで自分のレジュメを公開してみたことですね(笑)。シリコンバレーの人事の人が検索しそうなワードを設定して、試しに職を探してみたら、実際に米国企業から10件くらいお誘いが来て、実際3人ほど、skypeで話しをしたり、面接を受けたりしました。それがきっかけでシリコンバレーのスタートアップの開発を、リモートで少しお手伝いしていたこともあります。

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誰もがプログラミングをできる世界をつくりたい

――今後のビジョンを聞かせてください。
いまは修行の時期だと思っているので、目の前の仕事に全力で取り組みたいと思います。そして、いつかは違うことに挑戦したいと考えています。それは社内の別のプロジェクトかもしれませんし、別の会社に移るかもしれません。しかし自分が影響力を与えられるような小規模な会社、グループでやりたいとは考えています。

――西浦さんが将来的に目指していることは何なのでしょうか?
私は「誰でもプログラミングができる世の中」をつくることに興味があります。私は、高校生でプログラミングを始めたときに挫折してしまいました。しかし、いまはプログラミングが身近で簡単なものになってきて、情報系出身者でなくても扱えるようになってきています。

例えば料理でも、クックパッドのおかげで、それなりにおいしい料理を誰もが簡単に作れるようになりました。プログラミングに関してもそういう世界を作りたいと考えています。誰もが、わからないなりに適当にやってみると、なにかそれっぽいのが作れちゃう、というイメージです。

「誰もがプログラミングができる世界をつくりたい」、それが私の夢ですね。その夢を実現するにあたって、シリコンバレーで、そしてGoogleで働くのは非常によい修行になります。

日本人エンジニアはシリコンバレーでも通用する

――最後に、日本のエンジニアへのメッセージをお願いします。
シリコンバレーがベストな環境かはわかりませんし、全ての人に合うとも思いませんが、修行するにはいい場所だと思います。エンジニアとしてのスキルと英語に関しては、こっちに来て修行すればいいでしょう。やはりインパクトを感じられる面白い仕事があるし、働き方や給与、キャリアの面など全てが日本よりも恵まれていると感じます。

日本のエンジニアは、スキル的には十分に活躍できると思いますが、正直で謙虚な人が多くて押し出しが弱い。他国の人はセルフプロモーションがうまく、自分のスキルを盛ってアピールします。ただ、エンジニアという仕事は、成果を形に残せるし、言語に依存しない見せ方ができます。自作アプリのダウンロード数など、目に見える実績があるとシリコンバレーにも来やすいと思います。

シリコンバレーで働いている日本人エンジニアはまだ少ないですが、日本人エンジニアのコミュニティもあって、みんな楽しく働いています。シリコンバレーに来たいと考えている方にはぜひ挑戦してもらいたいと思います。

■プロフィール:西浦 一貴(にしうら かずき)
1989年、三重県生まれ。東京大学大学院情報理工学系研究科コンピューター科学専攻修了。Google Japan、Facebook本社でのインターンを経て、Google本社にソフトウェアエンジニアとして入社。また、写真共有アプリを開発するスタートアップにてリードエンジニアとして立ち上げから参画。

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